逆光





なんでこの流れで首絞められてるんだ俺。
上に乗った和泉はニコリと、いっそ天使のように微笑んだ。


「フォーク一本で、三センチの水たまりで人は殺せるんです。物に罪はないです。使った人に罪はあります。ようは殺る気の問題ですから」


だからもうウダウダするなと、その顔が語っている。
ギブの意を込めて彼女の手を叩けば、あっさりと離される。

急に通りが良くなった喉に思わず咳き込む。

ゴロンと胸に重みがかかる。
和泉がもたれかかってきていた。

首を絞めてきたかと思えば寄り添ってきたり。
やっぱり分からない女性だなぁ、と総馬は思った。

意趣返しのつもりで彼女の背骨をなぞる。
ぴったりとくっついた柔らかさから、トクトクと心臓の音が聞こえる。

総馬は目を閉じる。
彼女の温もりを独占できるのもあと半年。






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