逆光
『あなたは人間です。神でも仏でもない。人を救うことだってできない』
何度も思い出したあの日の言葉。
当たり前なその言葉が総馬は何故か嬉しかったのだ。
神でも仏でもない。
ヒーローでもない。
人より少しだけ化学が得意で、和泉という女性を愛した、ただの男。
数十年後、そんな男もいたな、と和泉が思い出してくれればいい。
そんでもって、少し後悔すればいい。
あんなに自分を愛した男と別れたことを。
「………ふっ」
いつの間にか芽生えていた自身の醜い感情に笑いが漏れた。
和泉が後悔なんてするはずないのに。
無性に悔しくなって、和泉の口を口で塞ぐ。
荒々しく、奪うように。
性急に服の中に手を入れ、肌をまさぐる。