逆光
いつもの総馬からは考えられないほど強引に事を進めた。
普段はもっと優しくしてるのに、今はそれが出来なかった。
野生の雄のように、貪るように和泉に縋った。
フーフーと欲を隠しもしない荒い息が上がった。
和泉は抵抗しなかった。
それどころか、宥めるように総馬の首に腕を回してキスしてきた。
和泉の腕に、肩に、うなじに。
気付けば本能のままに噛み付いていた。
とにかく、必死だったのだ。
あと少しでいなくなってしまう彼女。
分かっていても、ひきとめたくて、自分のそばにいてほしくて。
我を忘れて和泉にすがりつく総馬は、誰の目から見ても滑稽で情けなかったことだろう。
翌朝、布団を頭からかぶった総馬はしばらく動けなかった。
昨日のことを思い出して、あまりの恥ずかしさに出てこられなかったのだ。
自分が祝える最後の和泉の誕生日。
昨日の自分は何をやらかしたか。
記憶があるぶんだけに厄介で、総馬の頭の中は羞恥と後悔でいっぱいだった。