逆光
『私事ですが、離婚まであと一カ月と少しということもあり、少々バタバタしています。
家はそのまま私に譲ってくれるそうなので片付ける必要はないです。
だけど、何となく物が多すぎる気がしたので整理することにしました。
それから、』
それから。
自分はどう話を続ける気だったのだろうか。
眉間にしわを寄せ、和泉は固まる。
数秒後、ゆっくり筆の動きを再開させる。
『それから、最近はこれからのことをよく考えます。
再婚は、当分いいです。
しばらくは一人でゆっくりと旅行をしようと思ってます。
海が見える都市をめぐるつもりです。
マハ街、ウネ島のクロックビーチ、イトイ島のルニー港など、のんびりめぐる予定です。
次のパートナーはもしかしたら旅先で見つけるかも』
波の音。
足に絡みつく砂。
穏やかな時間。
次に翔へ出す手紙は、クロックビーチから送ることになるかもしれない。
広大な海岸線が写った絵葉書を、彼に送ろうか。
潮騒の音が、翔にも届けばいい。