逆光
「総馬さんは、お昼私と食べて良かったんですか?」
「ん?なんでだ?」
「いつも一緒に食べてる人とか、いたんじゃないですか?」
寺田総馬は人気者だ。
人気者同士は大抵一緒に行動する。
今までの学生生活でなんとなく和泉が知ったことだ。
翔という例外はいたが。
「あぁ、別にいつも一緒に飯を食べるような友人はいないぞ。大抵偶々会った知り合いと食べるな。」
「……」
「なんだ?」
「いえ、ちょっと意外でした。」
特別親しい人がいると思ってたので。
そう口にしてから、これは失礼なことを言ったかな、と思った。
まぁ、最早寺田総馬に興味はないので嫌われても構わないが。
驚くほどの冷酷思考で和泉は開き直った。
「うん、俺は特別親しい奴はいないかな。誰といても楽しいし。皆とそこそこに仲良くさせてもらっているよ。」
皆とそこそこに。
和泉は少しひっかかった。
「総馬さんは、友人から誘われたらラーメン屋にも行くんですか?」
「?そりゃ、誘われたなら予定が空いてれば行くさ。」
「私が誘ってもですか?」
「和泉さんがラーメン屋って想像出来ないけど、誘ってくれるなら喜んで。」
ニコリと、また意味もなく寺田総馬は笑った。
その笑顔に強烈なビンタをかましてやりたい思いを和泉はグッと堪える。
将来性はあっても、コイツはダメだ。
和泉はそう確信した。
無理だ、私の性格的に。
和泉は食べ終わった皿を持ち上げる。