逆光
「じゃあ、元気で」
そう言って、踵を返し玄関へ向かう。
荷物はリュックと鞄一つ分だけ。
我ながらよくまとめたものだと思う。
これからは、この荷物と自分の足で生きていく。
いつか和泉を思い出さなくなった頃、隣に誰か寄り添ってくれる人ができるかもしれない。
そう思った時。
唐突に、和泉が言葉を発した。
「気が変わりました」
総馬は数秒立ち止まってから、ようやく振り向いた。
窓のそばに立つ和泉はしっかりとこちらを見つめていた。
「私もナムトへ行きます」
「……は?」
およそ考えられない和泉の口から出た言葉。
総馬は呆然と口を開けて立ち尽くした。