逆光
「始めからそんな中途半端な終わりを目指すような奴には誰もついていきませんよ。」
人間ってのは基本、欲で動くんだから。
和泉の言葉に男はキリリとした顔を僅かに歪めた。
ホント、どうしようもない男だな、と和泉は呆れる。
この男は性善説を信じているのだ。
人は憎しみ合い愛し合いを繰り返すが、最終的にはほんの少しだけ、愛が勝つと。
人生には喜びも悲しみもあるが、最終的にはほんの少しだけ、喜びが悲しみを上回ると。
お前それ、地球のどこかの貧しい国で飢えで死んでいく子供に言ってみろよ。
悲しみはあるけど、喜びはもっと多いだなんて、ふざけたこと言えんのか。
和泉はこの男のそういうところが嫌いだった。
困ったように笑う顔に思わず舌打ちをする。
周りにいた人達が驚いたように和泉を見るのが分かったが、気にもしなかった。