逆光
「別に初めて会った時のことを蒸し返してるわけじゃないぞ。ただ、和泉さんと俺は全然考え方が違うようだから、もう少し話したくなったんだ。」
ラーメン屋は、ついでだ。
牛丼屋でも構わない。
なんならフレンチレストランでもいいぞ、と寺田総馬は畳み掛ける。
「昔本で読んだんだ。自分と違う価値観の人と話すのは何よりの勉強だと。」
「はぁ。」
和泉は寺田総馬のキリッとした眉を見る。
本当に、この人とは分かり合えないんだなぁと思う。
人生の時間は短いのだから、気の合わない人とわざわざ一緒にいることもないだろうに。
まぁ、それで本人の気が済むのであれば別にいいが。
この時点で和泉はすでにめんどくさくなっており、別にいいですよ、と返事をしていた。
本当か、と嬉しそうに言う寺田総馬の言葉に適当にハイハイと言っておいたら、いつの間にか携帯番号とメールアドレスまで交換していた。
何故だ。
じゃ、またなと言って笑った寺田総馬の顔を見つめながら、やっぱりこの人は嫌だなぁと和泉はしみじみ思った。
果たしてこの無益な交流はいつまで続くのやら。
出来る限り早く終わってくれることを願うばかりだ。