逆光
「うちの国が正義だとでも思ってたんですか。」
「少なくとも、まほろば国よりは正義だろう。うちの国は統治した国に強制労働なんてさせないし、人体実験なんかしてないだろう。」
「勝ったから言えるんですよ、それは。」
ラーメンからメンマを摘み上げ和泉は寺田総馬に目を向ける。
「メンマ食べてください」と言えば寺田総馬は無言で器を寄せてくる。
ポイポイと寺田総馬の器にメンマを入れる。
手持ち無沙汰になったのだろう寺田総馬が反論してくる。
「うちの国は統治しているピン諸島に学校を作ったりインフラを整備してやったりした。まほろば国のように見せしめのために住民を数千人斬首するようなことなんてしていない。」
「してますよ。」
「証拠なんかないじゃないか。」
「そりゃあ勝った側にそんな話があるとまずいから金と権力で潰しただけでしょう。ジア地域の人達がまほろば国の兵には抵抗してうちの兵には抵抗しないとでも思ってるんですか。誰であれ自分達の地を侵略しようとした者が居たら人間抵抗するでしょう。」
メンマを全て寺田総馬の器に移し終え、器を返す。
ラーメンは好きだがメンマはどうしても苦手だ。
移すのは失礼だと思うが残すよりはマシだろう。
メンマも美味しいと思ってくれる人に食べられる方がいいはずだ、と和泉は自分に都合の良いように思いながら考える。