逆光
「そもそも、悪いことをしたまほろば国を倒したからと言ってうちの国が正義になるわけないんですよ。戦争は正しい国が勝つのではなく、戦力がある国が勝つんですから。」
「……」
「正義になりたいんだったら途上国を発展させるとか、いや、そもそもあんなパワーバランスが崩れた国際情勢になるのを阻止するために動かなきゃ。現に、敵国だって偽善の国だってうちを責めるじゃないですか。」
「それは、向こうがあることないことを責めてるだけだろう。敵なんだから、何を使ってでもうちを貶めてくるんだ。」
「そうですよ。うちの国は勝者であって正義でありたかった。だから、敗者であるまほろば国を悪者にしたんです。」
キッと、寺田総馬が和泉を睨みつけてきたのが分かった。
「和泉さんの思想は分からんが、あんな時代錯誤の植民地支配をした国とうちの国とを一緒にしないでくれ。」
寺田総馬の声はキツかった。
和泉はじっとスープに浮いた油を見つめる。
時代錯誤。
確かに、和泉の考え方は時代錯誤なのかもしれない。
東西に分かれた緊張が今も続いていて、新しい敵国があるのに、前の大戦に拘るなど。
ただ、納得出来ないだけだ。
昔のことだ、今生きてる者には関係ないと言ってあしらえないくらい、自国の歴史に理不尽さを感じるだけだ。