逆光






「他国の植民地支配に対して偉そうに言える国じゃないですよ、うちは。入植者が原住民を殺して乗っ取った国なんて、植民地支配の国よりもタチが悪い。抵抗者を殺し尽くしたか、尽くせなかったかの違いだけですよ。」

「……それでも、原住民の子孫はまだ生きてるだろう。」

「0.9%ですよ。混血がいるとしても、元々100%だったのに、1%下回ってるんです。」



自分たちの祖先を悪く言うつもりはない。
生きるために必死だったのは分かる。
生きたいと願うことを非難する権利は和泉にはない。

ただ、二千年以上も前からこの地で脈々と命を紡いできた人達がいたことを考えると、寒気がするのだ。


「怖くないですか。」

「何がだ?」

「数千年前からここで生きていた人達の祖先が、今この国をどんな思いで見てるのか、考えると。幽霊とかあまり信じてないですけど、本当に長い間受け継がれてきた血脈とか土地には何かある気がするんですよね。」


最後にスープを一口啜って、ごちそうさまと手を合わせる。
ラーメンはなかなか美味しかった。

財布を取り出そうとすると寺田総馬に手で制止される。


「俺が誘ったから俺が払うよ。」


目も合わせずそう言うと革製の財布からお金を取り出す。





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