逆光








お、カミーユフォルネの財布だ、さすがボンボン。
和泉は15万はするであろう寺田総馬の財布に目を瞬かせる。

カミーユフォルネは結構年配の男性が使っているイメージがあったから意外だ。


「和泉さんは、」


和泉が財布について考えていると、寺田総馬が話しかけてきた。


「この国が嫌いなのか?」

「好きではないですね。でも、住むなら良いと思います。」


この国以上に良い暮らしが出来る場所なんて他にそうそうないだろう。


「そうか。」


それだけ呟く。
何も話さず、笑いもしない寺田総馬は何か考えているようだ。
その凪いだ横顔は、和泉にはやけに成熟したものに見えた。

あぁ、そういえばこの人私より年上だったな、と思った。







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