逆光




深緑と藍色の落ち着いた色合いのレースドレスに身を包み、和泉は寺田総馬に連れられパーティー会場へ訪れた。

寺田総馬はストライプが入ったスーツを着ている。
童顔の彼に大人っぽい格好は意外にも似合っていた。
顔が整っていれば大抵の服は似合うのだろうな、と和泉は思った。


「和泉さんは本当に見た目だけは上品で可愛いのにな。」

「皆からは見た目も性格も可愛らしいって言われますよ。」

「え、そんなこと言う人がいるのか。」

「失礼ですね。大学の人からは評判いいですから、私。」


ふふ、ととりすまして和泉がそう言えば寺田総馬は苦笑いする。


「そりゃあ、和泉さんが大学では猫かぶってるからだろう。君の本性はなかなか強烈だからなぁ。」

「でも、私の性格知っても大抵の男は私を諦めませんよ。」


今までの経験からしてそうだ。
和泉がどんなにキツくつっぱねても和泉に惚れた男はなかなか諦めない。

スッと目を流し自分の耳元で揺れるイヤリングに意識を向ける。
キラリと光るカルティエのトリニティイヤリング。
二十万はするであろうこれも、昔和泉に惚れた男から貰ったものだ。
和泉に惚れた男たちは初めは普通のただの青年だ。
だが、和泉の性格を知るや否やいつの間にか貢いでくるようになるのだ。

断り続けるのも面倒くさくなり受け取るようになったのはいつからか。
翔からは「和泉からは女王様オーラがでてる。貢ぎたくなる男の気持ちも分かる。」と言われた。
何故だ。

貰えるものは貰えるだけいただくが、和泉が男達の想いに応じたことはない。

ティファニーもミウミウも好きだがあんたのことは好きじゃない。
ブランドもののバッグや財布を受け取ると和泉はいつもそう言っている。
それで諦めればいいものを、何を血迷ったかさらに貢いでくるようになるのは本当に訳がわからない。

それでも、偶に高級な物をくれるだけで危害は加えてこないのでほっといているが。




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