逆光
「和泉さん。」
ぼんやりとしていたところに寺田総馬に声をかけられハッとする。
目を向けた先ににこやかに笑う寺田総馬ともう一人。
スッと細い目をした綺麗な男が立っていた。
あの人が寺田総馬が言っていた友達か。
賢いけど、良い奴ではない人。
和泉は微笑みながら軽くお辞儀をする。
「紹介するよ、大谷だ。俺と同い年だ。」
「よろしく。」
「こちらこそ。」
差し出された手を握り返し、その手がひんやりとしていることに気付く。
「総馬から話は聞いてるよ。君が和泉さんかぁ。本当に綺麗な人だな。」
「いえ、そんな。」
さすがは一等地でパーティーをするだけあって育ちが良いらしい。
笑い方一つにしても 品があり落ち着いている。
品があるのはいいな、と和泉は思った。
「俺と総馬は高校の時同じクラスだったんだ。」
シュワシュワと気泡が遊ぶ炭酸水を飲みながら大谷はそう説明してくれた。
主役なのだからシャンパンの一つでも飲めばいいのに、と思う和泉の視線に気付いたのか、「酒は苦手なんだ。」と困ったように笑いかけてきた。
へぇ、と少し意外な気持ちで見つめていると「総馬!」と寺田総馬にお呼びがかかった。
にこやかに笑う眼鏡をかけた男が寺田総馬に手を上げ合図している。
すまない、と一言言うと寺田総馬はその男の元へ歩いていった。