逆光
「大谷と似たようなことを言う女性がいてな、」
急に呼び出されたと思ったら、心底困ったように総馬は話し始めた。
なんでも、誰でもいいんだろお前、と言われたらしい。
へぇ、と大谷はその時少し驚いた。
大体の女性は、総馬の人当たりの良さを好意的に受け止めるものだが。
初対面で総馬の人付き合いの異様さに気付く人がいたとは。
大谷はすっとした気持ちで総馬を見た。
「その通りだろ、お前は。」
「大谷までそう言うのか。どういうことなんだ、誰でもいいって。俺はそんな節操無しに見えるのか。」
「そういうことじゃなくて、お前は平等すぎるんだ。」
大谷の言葉を受けて数秒ほど寺田総馬は考え込む。
「平等なのは、良いことじゃないのか。」
合点がいかないようにあいつはそうこぼしていた。
やっぱりこいつには分からないんだなぁ、と少し大谷は残念に思った。
それから何日か経った後。
大谷が再び呼び出された時は、総馬はなんだか怒っているようだった。
「彼女は友人に優先順位をつけているらしい。」
「へぇ。」
「友人に順位をつけるなんておかしいだろう。皆大切な友人のはずなのに。」
「小学生かお前は。」
小学校の道徳で語られるようなことを言い出した総馬に大谷は思わず呆れる。
総馬は眉間のシワを深くして大谷を見る。
「大谷も友人に順位をつけてるのか!?」
「いや、順位っていうか、線引きだけどね。家に招いてもいいと思える奴と、思えない奴とかいるだろ。」
言ってから、順位だ線引きだなんて回りくどい言い回しじゃなくて仲の良さ、なんて言っとけば良かったなと思った。
はぁ、とらしくもなく総馬はため息をつく。
「どうあがいても、俺と彼女は合わないらしいな。俺には分かるはずはないと言われてしまった。」
しかしそう言われると悔しいな、と総馬は独りごちる。
思えばあの時から兆候はあったよなぁ、と大谷は思う。
お前には分からないと言われて総馬がムキになったのもあっただろうが、なんとかして繋がりを持とうという意思もあったのではないか。
総馬らしくもなく物で繋がろうなんて。