逆光





「妥協じゃなければ喜んでなんだけどなぁ……」

「贅沢過ぎですよ寺田さん。私からお付き合いを申し込むなんて滅多にないんです。申し込まれただけ幸せだと思ってください。」


「本当に和泉さんのその性格はどうにかならないのか。」


寺田総馬の呆れた目を和泉は軽くスルーする。
ウエイターが近づいてきて食べ終わった皿を片付けていく。
次はなんだろう。

和泉としてはもう結構お腹がいっぱいになっていたのでデザートが来てほしいが。

そう思っていたら、何やらお高そうなチーズが運ばれてきた。
和泉はチーズには詳しくないが、食べてみると独特の苦みがある。
所謂、大人の味なのだろう。


「考えたんだが、俺の気の持ちようでどうにかなる気がしてきた。」

「はぁ。」


モグモグとチーズを頬張りながら寺田総馬がそう言ってきた。


「つまりは、和泉さんを本気にさせればいいわけだ。」

「よくもまぁそんな荒唐無稽なことを思いつきますね。」

「いや、そんなことないぞ。多分10年後には和泉さんはおれにメロメロだ!」

「はあ。」


結構先の話だなぁと思いながら和泉はチーズを食べ切る。
寺田総馬はニコニコと嬉しそうなのでまぁ本人が良いならいいんじゃないかと思った。
夢を見るのは自由だ。


「とりあえず、これからは恋人としてよろしく。」

「そうですね。よろしくお願いします。」


下を向いて照れながら手を差し出してくる寺田総馬。
和泉はそれに応えながら、早速サマンサタバサの新作を買ってもらおうと考えていた。





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