逆光
「愛って怖いな。」
和泉もモテるんだから気を付けろよ、と翔は忠告してくる。
あんたみたいなヘマはしない、と思ったが黙っておいた。
なんだかんだで翔は人が良いのだ。
なんでこんなに優しい人が和泉の友達なのか、自分でもたまに不思議に思う。
「俺さ、人として好きな人はたくさんいるんだ。」
ポツリと、遠くを見るような目で翔が話し出した。
そこそこに散らかった翔の部屋に座ったまま、和泉は翔の声に耳を傾ける。
「けど、異性を好きっていう感覚が分からない。」
翔の部屋の本棚にはサッカー雑誌がたくさんあった。
和泉には分からなかったが、誰かのサインが書いてあるユニフォームやボールも飾ってある。
異性を、好きという感覚。
和泉はその言葉を反芻する。