逆光
『和泉さん、あのさ、友人としてのアドバイスだと思って聞いてほしいんだけど』
「……はい」
『悪気はないんだよ』
「分かりましたから。で、何ですか?」
『うん、あの、総馬と別れた方がいいかも。』
しばしの沈黙。
予想もしていなかった大谷の言葉。
和泉はその真意を考える。
「……大谷さんが代わりに付き合ってくれるんですか?」
『やだよ。俺、総馬に刺されたくないし。』
和泉は再び黙る。
今のところ寺田総馬は和泉が欲しがる物は大体買ってくれる。
ワガママにも付き合ってくれるし、大谷がダメなら結婚相手の候補としては彼しかいない。
理由もないのに別れるという選択肢はなかった。
「別れませんよ。彼、お金持ってますし」
『和泉さんは和泉さんだなぁ』
電話の向こうで困ったように大谷はそう言った。
別れた方がいい、とは。
大谷が何故そう思ったか。
教えてくれないのであれば、和泉が独自で調べるまでだ。
「和泉さん?」
大谷との電話を思い出していたら、寺田総馬に声をかけられ我にかえった。
彼は些か不機嫌そうな顔をしている。