逆光





「何ですか?」

「和泉さんと大谷よく連絡とってるな、と思ってだな」

「寺田さん何か法に触れることしましたか?」

「は?いや、やってないが。なんだ急に突然。」

「この前大谷さんに寺田さんと別れた方がいいと言われて。何かやらかしたのかと」

「はぁぁ?」

寺田総馬が勢いよく身を乗り出す。
その顔には困惑だとか怒りだとかが表れていた。


「え、別れないぞ!」

「当たり前です。今のところ結婚は寺田さんとするつもりですし。」


ジューッとソフトクリームラテを飲みながら和泉がそう言うと寺田総馬は固まった。
じわじわとその顔が赤くなっていくのが見てとれる。

慌てて新聞をバサリと立て顔を隠す。
二十代の男が何を照れてるんだか。

和泉は冷めた目で寺田総馬を見ていた。


「和泉さん」

「はい?」

「えっと、その、幸せにするからな」

「はぁ。よろしくお願いします」


大分温度差のある会話だが、これでも関係は一年続いているのだ。

それにしても、なんで寺田総馬は和泉のような性格の悪い女に惚れているのか。
自分でも全く分からない。

ただ一つ言えるのは、寺田総馬の趣味はかなり悪いということだ。






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