彼に愛を教えてください。
彼と私と
―――親友が、加奈子が亡くなった。
その一報を受けて、私は今葬式会場にいる。喪服に身を包み、顔を隠すように髪を垂らした。
チラリと見た祭壇上の写真には、高校生の頃の彼女が写っているのがわかった。そうだ、彼女はこんな風にくしゃっと笑う子だった。出会った頃の彼女は、無垢で無邪気で可愛らしく、そして美しかった。可愛い見た目をしていたのだが、全身に身にまとうオーラがどこか神聖で美しく見えたのだ。
まだ、高校生の私はそのころの彼女に憧れたのだろう。少し変わった環境で生まれ育った彼女は、周りのクラスメイトとは一線引いていた。
頬も目も乾ききっている私の隣にいた、夾ちゃんは私の手をぎゅっと握ってきた。同じ会場にいる元クラスメイトがこっちを見て騒いでいるのが見えた。騒ぐのも無理はない。卒業してから彼は大人っぽくなったが整った顔立ちはそのままだ。綺麗な顔をしている。
「……あ」
懐かしい声に、振り向いた。
私はきっとこの日を心待ちにしていたのだろう。もっとも会いたくなったこの男と再会できる、この日を。
「久しぶり、二人とも。こんなとこでいちゃつくなよ」
明るく白みがかった茶髪はどこか儚しい。少しチャラいこのしゃべりかたに私はようやく涙を流すことができた。
あぁ、葬式が始まる。