彼に愛を教えてください。
「それ、ちょーだい」
「えー?もー、しょーがないなぁ」
「ありがと、センパイ」
「……」
二階の窓からだったら声は普通に聞こえるようだ。窓枠によしかかりながらそんな甘ったるい会話を聞く。
「あーぁ、加賀君これで何人目?この前まで派手めのギャルだったのに」
近くで一緒に会話を聞いていたクラスの女子が苦笑いで話しかけてきた。
「ほんとね、今度は黒髪美人」
「ほんと、面食いだよねー」
「二人とも、何見てるの?」
「あ、加奈子」
「加賀君だ。新しい人?」
「そう、また変わったの」
「……あー、……カラッポだなぁ」
「……ん?」
「いや、ほんとすごいよね」
「ねー」
中庭を眺めれば、大抵彼はそこにいる。髪色がとても派手ですぐにわかった。派手だけど、おとなしくて消えそうな色。なのに無駄な存在感がある。そんな人だった。
そして、噂通りの人。
いつも、隣には女の人がいた。特に学校でそれなりの地位を持っていそうな子たちばっかり。最初に感じた、あの違和感はこれかと勝手に納得していた。しゃべり方といい仕草といい、何故か彼には気を許そうとしてしまうのか、何か不思議な魅力でもあるのか、私にはわからないが例えるなら、理解者の立場にほしい人間である。