a little love.
「手紙、読んでくれたんだよね」


「……はい」



もう、どうしてだろう。


こんなときに玲都のことを考えて……。



「ありがとう。……俺と、付き合ってくれないかな?」



ほら。心臓の音も、玲都といるときとは全然違う。


あれほど、高鳴らない。



「えっと……」



最低だ、あたし。


今、あたしのことを想って告白してくれている先輩が目の前にいるのに……。


いるのに、玲都に恋してること、気づいた。



「ごめん……なさいっ」



悲しいわけでも、悔しいわけでもないのに、涙が止まらないよ。



「あぁ……。泣かないで。泣かせたくて告白したわけじゃない」



涙を隠すようにうつむいた顔を、さらに両手でおおって先輩から見えなくした。



「優帆ちゃんは……」


「……はい」



もう、泣きたくなんかないのに。


涙を拭って、また出てこないように歯を喰いしばった。


何かを話そうとする先輩を見上げると、ちょうど目が合った。



「好きな人がいるんでしょ?」


「え……?」


「初めて近くで見て思ったんだ。君は、恋をしてるんだなって」



すごい。すごいよ、先輩。


あたしは自分のこと、今気がついたばかりなのに。


先輩は、あたしより先に気づいちゃったんだね。


あたし、ばかだな。


こんなに好きなのに。


今まで、恋というものを知らなかったから。
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