a little love.
「ふぅ、いいもの見ちゃった」


「か、果依……」



果依はオムライスをトレイに乗せて立っていた。



「席とるの忘れちゃったっ」



見られていたことが恥ずかしくて、話をそらそうとしたけどそんなの無意味だった。



「いいよいいよ。倉橋、かっこいいね」


「えっ」


「あ、大丈夫大丈夫。倉橋は優帆のものだよ」


「そんなことっ」



心配してない。そう言おうとしたけど、反抗する気力がなかった。


学食にいるほとんどの人が、さっきのことを見ていたのに気がついたから。



「あー、もう!」



果依もそれに気がついていたらしく、くすくす笑い出した。



「果依、お昼食べよっ」


「はーい」



かろうじて空いていた席に座ることができた。


割り箸がパキッと割れたのを合図に、果依が呟いた。



「わたしもあんな彼氏ほしいな」


「果依は、好きな人いないの?」


「いないー」



果依の恋バナは聞いたことがないから、詳しく聞きたいと思っていたけど、いないんだ。



「つくらないの?」


「うーん……。いいヤツいないんだよなあ。あ、でも」



オムライスにいっていた視線が、あたしに向いた。



「優帆と倉橋がただのクラスメイトだったら、倉橋に恋してたかも?」



唐突にそんなことを言うから、卵焼きを食べているのにむせてしまった。


果依が買った炭酸をもらって落ち着いたけど、炭酸っていうのも気分がおかしくなりそう。



「も、やめてよ。怜都は……」


「あたしのものって?」


「ちょ、果依っ」



恥ずかしいから途中で言うのやめたのに。



「冗談よ、冗談」



何だかんだいって、果依と一緒にいると何してても楽しい。


果依がいてくれてよかったよ。
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