双華真月 ~ラグナル防衛大戦争~
第一戦
殺戮衝動
ーーーポチャン……ポチャン……ポチャン……
ーーージッ……ジッ……ジッ……
当たりは暗く静けさが増してる。
そんな中でただ寂しげに響くは、天井から雨漏れにより滴が落ちる音と木をナイフで削る音だけだ。
ふと天井を見る。
木材で出来ている家だが既にボロボロ。
天井の木材は取れかけており、それによって出来た隙間から垂れる滴。
眉間にしわが寄る。
ーーーチッ。またか。
いつものことである。
ここの家は出来てまだ半年も経たない。普通ならこんなことは先ずないだろう。
だが、ここハザベル村では木材が非常に高値なのだ。
ここ最近、木材が豊富な村として有名だったカルザンというところがとある侵略にあってからと言うもの、木材の輸入が激変したのだ。
その原因はあいつらだ。。
あんなことが無ければ……俺の仕事は……!
俺の仕事は木を細工して品を作る作業。
そんな作業も木材の輸入が激変してからほとんど仕事が入ってこない。
勿論、収入だって少ない。
皆から期待され"天の職柄ロディン"と呼ばれていた俺は過去の話。
それでも俺は許せなかった。
木材での作業が中心であるハザベル村は木材の輸入が減ってしまったことにより、貧しい暮らしをする人が大半を占めている。
ーーーそんなことも知らず……平然と!
なにが生活を変えたのか。誰に聞かずとも分かっている。
Γ空幻戦争……」
"空幻戦争"。この言葉は今やハザベル村でちらほら耳にする。
空が汚れ、幻であったかのように平和が奪われた戦争を意味している。
まだここハザベル村は侵略されてない。
だが、この村の西隣のサラベラ村という獣人族などの多種族が住む村まで侵略されているため、ここが侵略されるのは時間の問題であると村長がそう言っていた。
ーーー戦う気はないと言うのに。
それでも魔神は侵攻を止めない。
それどころかこちらに休む間すら与えないほど凄まじいと言う。
二年前から戦いに身を投じていない。
そんな俺が敵うわけがないのだ。
ーーーせめて国が。
国……それは俺たちの国であるラスカール王国のことである。武芸に優れた者が集まるラスカール王国は他の国でも一目置かれている。
そんな王国が成す術もなく村を失う。
それは民からしたら絶望的なことだ。
国にも頼れずただ死ぬのを待つだけ。
ーーーそんなことになれば……皆が。
そう思わずには居られない俺はナイフを無造作に放り投げ、自分の家を後にした。