双華真月 ~ラグナル防衛大戦争~
「やるなお前。だが、相手が悪かったな」
その声に目を開ける。
……っ!!ば、、バカな!!
爆発の煙から姿を現した魔神カボイラ。
それもニヤついていた。
どこまで魔力あんだよ……こいつ!
「お前はよくやった。俺の技に対抗する物があったなんてな。
まあ……お前はここで終わりだ」
魔神カボイラが俺に近づいてくる。
来るな!くそ!動けよ、体!!
だが動かない。
いきなり力を使いすぎた俺の体は言うことを聞かない。
「さあ。その精霊ごと食ってやるよ!」
魔神カボイラは俺の目の前にくるなり鋭い爪をした大きい手で俺の頭を鷲掴みにする。
もはや……ここまでだってのか……。
絶望に浸りそうになる。
俺は……こいつには勝てねえのか…!
「終わりだああ!この雑魚めがあ!」
これまた鋭い牙が開いた口から露になる。
死ぬ覚悟をする。俺の……負けだ。
ーーーブスッ
ん?刺す音?
「……んごお!」
魔神カボイラの表情が苦悶を浮かべている。
よくみると腹にはなにかが刺さっている。
「……っ!!」
見て気づく。
それはコルマが操る孝美赦偃月だと。
しかも傷がつかなかったはずの体からこれまた気持ち悪い緑の液体。
これが魔神の体液だと言うことか。
「甘かったな魔神よ」
意識が液体に逸れていた俺はハッと現実に戻る。
コルマの冷たくあしらった言い方に意識が引き戻されたんだ。
「こ、、この下等があ!!!」
魔神カボイラは激昂し、コルマと向き合う。
俺は解放された体をなんとか立たせる。
これが精一杯だ。
「お前はロディンとの戦いに夢中になりすぎてたな。どっちが下等だ」
冷たくあしらうコルマは続ける。
「お前の戦いを見て気付いた。お前が手にしていた棍棒。
あれは一人にのみしか効力を発揮しないポンコツだと」
一人にのみに効力だと……!!
俺がそう思う間もなくコルマはまだ続ける。
「おかしいと思わなかったのか?
お前がロディンとの戦いの最中、ロディンは重力によって体は制限されていた。
だが、俺はロディンの隣に居なかった」
「な、なんだとお!?」
魔神カボイラの苦悶の表情が怒りに変わってるのがなんとなく分かった。
「それにお前が技をロディンにぶつけてる際、棍棒は無かった。そして爆風と爆発。
今までのお前なら傷はないはず。
なのにロディンとの技衝突を終えたお前は僅かだが傷が残っている」
「……そんなことがあ」
「それがあるんだ。確認してみろ。
その時間ぐらいは譲ってやろう」
「……なっ……!」
傷を確認したのか魔神カボイラは唖然としている。
俺の目からもハッキリと見える。
確かに……僅かだが傷がある。
「分かったか?そしてお前は最大のミスをおかした」
最大のミス……
そこで気付いた。魔神カボイラのミスを。
「すなわちお前は自分の武器の性能を全く知らない。
その棍棒は恐らく身骨棍棒(みこつこんぼう)。身に付けてないと効果を発揮しない棍棒だ」
「ハンッ!そんなの言ったら終わりだろお?棍棒を出せばいいだけの……!ん?」
棍棒を出そうとしてるようだが、その棍棒は出てこない。
言わば、魔力の消耗が激しかったのだ。
「消耗しすぎたようだな。魔神。
ご利用は計画的に。だと習わなかったのか?」
おい!そんなこと言っても奴にはなにか分からんだろ!
「まあいい」
コルマは冷たく笑う。