それを愛と呼ぶのなら。【完】
何が意外なんだろう、と思ったけれど、軽く笑って三宅さんの顔を覗く。
その顔は、会社で見せる無表情な顔ではなく、意地悪く笑う楽しそうな顔があった。
こんなに表情のある人だったんだ、と新発見したことに少し嬉しくなり、三宅さんの顔を見つめていた。
「意外ですか?」
「そうですね。どちらかというと、背が高くて男らしくて強そうな人が彼氏って感じです」
「アレみたいに?」
そう言って指差したのは、カウンターの中にいるトシだった。
同い年のその店員は、元自衛隊ということもありガタイが良く、身長180センチ以上、体重ほぼ100キロという体型をしていた。
「あぁ…まぁ間違っちゃいない。けど、もう少しシュッとした感じかな」
そう言った三宅さんの言葉に二人で笑った。
確かに、間違ってない。
私はシュッとした感じの方がタイプだ。
でもそれって、トシがハッキリ言えば『デブ』ってことですよね?
そんな三宅さんの言葉は、真っ直ぐで正直で。
あまり何かを誤魔化したりとかしないその物言いは、とても好感の持てるものだった。
「ハハハッ!三宅さん、会社と全然キャラが違いますね」
「暁、会社の悟ってどんな感じ?」
「うーん、喋らない、笑わない、暗い感じ?」
「マジか!?いや、それの方が面白いわ!」
「でしょ?だから、あまりにも違って面白くって」
私とカズさんが好き勝手言っていると、三宅さんは全力の声を上げてそれを否定した。
「いやいやいやいやっ!そりゃ、会社とプライベートは違うでしょ、って!ほら俺、クールキャラで通ってるから!」
「今は全然違いますが?」
「まぁ、そうだね。でも、そんなもんだろ、って!」
「私、何も変わらないですけど?」
「…うぅん…まぁ、そうだね。でも、それは本城さんが特殊なだけで…」
『まぁ、そうだね』って、口癖なんだ。
そんなことを言いながら、三宅さんは何かを考える素振りを見せた。
私もカズさんも、突然黙った三宅さんを見て、『?』が沢山浮かんでいた。