それを愛と呼ぶのなら。【完】




「本城さん、なんて呼べばいい?」


「ハイ?」




もう、話が飛んで訳がわからない。

こんなに突飛な人だったのか、と目を丸くするばかりだった。



自由気ままなこの人が、なんだかとても身近な存在に思えた。

この人の纏う雰囲気は、私をとても安心させる。

それと同時に、寂しくなった私の心にそっと寄り添ってくれているような気になった。




「好きに呼んでくれていいですよ。みんなは『暁』って呼びますけど」


「まんまだな。じゃあ、暁って呼ぶわ」


「三宅さんは?」


「うーん、俺も下の名前が多いかな?」


「悟さん?」


「まぁ、そうだね」




そう言った悟さんを見て、カズさんが横から茶々を入れてくる。

もう、この人は。

どんだけ悟さんのことが好きなんだか。



でも、このノリを見てればわかる。

お願いされたら嫌とは言えない性格らしく、カズさんの言う無茶ぶりにも一つひとつ丁寧に対応していた。




ただ一つ気になるのは。

異様なまでの口の悪さ。

会社では聴いたことのない乱暴な言葉遣いだった。




「悟はいっぱいあるだろうよ、あだ名。サックンって呼んで貰えよ」


「いや、それこの店だけだから」


「サックーン!照れんなって!」


「いや、マジ馬鹿!気持ちわりぃわ」


「わぁ…悟さん、意外と口悪い」


「いや、まぁ…そうだね。でも、これが俺だから」




開き直る悟さんがとても潔くて、やっぱりいいな、と思った。

楽しくお酒を飲んで、楽しく色んな話をした。




悟さんはとっても聴き上手で、色んな事を見透かされそうで怖かった。

相手のことを見抜くのはそんなに上手ではない。

でもその分、考えていることを丁寧に聴こうとしてくれる。





甘い声と、活舌の悪さ。

口が悪い癖に、人のことをすぐ心配する性格。

よく見ると綺麗な目をしたその人は、とても素敵な人なんだな、と想った。




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