それを愛と呼ぶのなら。【完】
涼ちゃんがいなくなって二週間が過ぎたころ。
私が出逢ったのは、自由で気ままで優しい人だった。
私の寂しさを知っているからこそ、その人はいつも連絡をくれた。
そして、私も悟さんを呼びつけては一緒に飲んだ。
この店に来たらどちらかが連絡をする、という暗黙のルールのようなものが出来あがっていたように想う。
会えば他愛もない話で朝まで飲んで、次の日の仕事が辛かったーっ、と言って飲みに行くような毎日。
週に四回も一緒に飲む程、私たちはあっという間に距離を縮めた。
それはまるで、随分前から知っている同級生のような感覚だった。
言いたいことを言って、したいことをして。
それでも何故か一緒に遊んでいるような。
そんな距離感。
私よりも五歳年上のその人は、時に兄のようであり、時に友人のようだった。
いつの間にか呼び捨てになったその名前も、全く気にしていなかった。
私が笑えば悟も笑う。
悟が笑えば私も笑う。
私の愚痴を吸い込む悟。
悟の悩みを吸い込む私。
誰に聴いてもらうよりも悟に聴いてもらうことが、私の心を軽くしていった。
そして、悟も。
何か嫌なことがあった時。
何か、楽しいことがあった時。
どちらともなく報告する癖が付いていた。
悟とこの店で逢って、一ヶ月の間に何日一緒にいたかわからない。
それくらい、同じ時間を共有していた。
涼ちゃんがいなくて寂しかったはずの私の気持ちは、そんな寂しさをあまり感じることなく時間だけが過ぎていった。
胸に落ちる黒い気持ちが罪悪感であることは知っていた。
それでも。
気付かないフリをして悟と飲んでいた。
それがどういうことかも。
本当は、わかっていた。