それを愛と呼ぶのなら。【完】
「しかし、悟は暁にベッタリだな」
「そうですか?まぁ、仲はいいですけどね」
「あれだよな。涼一がいなきゃ、普通に付き合ってそうだよな」
カズさんが私に向けて簡単に言った言葉は、私の胸の中にドンと響いた。
そんなことを悟られる訳にはいかないと、私はにっこりと笑った。
「カズさん、馬鹿なこと言わないで。そんなわけないですから。サトは別に私のことを恋愛感情で好きなわけじゃないし。『母親』みたいな安心感ですよ」
「そうかぁ?俺は、お似合いだと想うけどなぁ」
「やめて下さい。涼ちゃんに殺されますよ?」
「違いない」
がはは、と大きく笑ったカズさんを見て、やっぱりもう一度笑った。
カズさんのその顔が、私を追い詰めて苦しい、と想って。
「でも、暁が呼べば悟はいつでも来るよな?」
「何言ってるんですか!フラれる事だっていっぱいありますから」
「ソレ、悟も言ってたわ。そういうところもソックリだよな、お前ら」
カズさんは店長だけあってよく見てる。
そして、私の事も悟の事もよく知ってる。
これは、カズさんにしか出来ない、私への『警告』なんだってわかっていた。
カズさん、大丈夫。
それはね。
考えてはいけないことなんだよ。
今の私には、不要な感情なんだよ。
結局、悟は私の膝ですやすやと眠り続けた。
私は、動く事もままならずひたすらお喋りしながらお酒を飲み続けた。
何度かカズさんが悟を抱えてカウンターに寝かせてくれたけれど、少し寝惚ける度に私の膝に戻ってきた。
それを見て悪態をつき、みんなで悟を笑う。
その声を聴いては、悟の腕の強さが増す。
他の誰にもわからないように、私はそっとその腕を撫でて、その強さに応えていた。