それを愛と呼ぶのなら。【完】
「もう、サト!結局、こんな時間じゃない!」
「んー…今、何時?ってかめちゃくちゃ酔ってる」
「当たり前だわ。いつも思うけど、ずっと飲み続けてるよね?」
「お前もな…。ってか、お前なんでそんなに元気なんだよ、マジで…」
「若さでしょ?」
「ふざけんな」
時刻は、朝の五時半。
始発が動くまで、あと三十分ある。
この時間にタクシーに乗るのは気が引けて、六時になるまで歩こう、と決めていた。
「サトはどうする?私は地下鉄動くまで歩くけど?」
「俺も帰んねぇ。このまま帰ったら会社行ける気しねぇ」
「じゃあ、どうするの?」
「ネットカフェで寝る」
「じゃあ、起こしてあげるわよ」
「マジでか!?助かるわ。さすが、暁」
「別にいいよ。私は出張の準備あるから寝ないし」
「お前、大丈夫か?」
悟は、結局こうやって誰かを心配していることの方が多い。
自分だってヘロヘロのくせに。
そんな時にまで、心配なんてしてくれなくてもいいのに。
「いいよ。呼びつけたのは私だし」
この言葉で、悟が少しでも私のこと気にしないようになればいい、と想う。
悟が、少しでもゆっくり休める時間を作れればいいと想う。
二人で歩く秋の朝は、寒さと気持ちよさが混ざり合っていた。
上を見上げると、綺麗な水色が空一面に広がっていた。
雲ひとつない、青空。
この空と同じように、私の気持ちも綺麗なものならいいのに、と想った。
「サトー。空が高いよー。すごい綺麗。すごい気持ちいい」
「あー…マジか。うわ、スゲーな。でも、見上げるの辛いわ…」
そう言って、二人で立ち止まる。
悟が私を見てる視線を感じる。
それに応えることなく、私は高くなった秋空を見上げていた。