それを愛と呼ぶのなら。【完】
「ねぇ、明日結婚式よね?そんなに飲んで大丈夫?」
「何言ってるの。これくらいで酔ったりしないの、知ってるでしょ?」
「そこじゃなくて。明日むくんでも知らないからね」
「ぬかりはない。明日、朝イチにエステだから」
「あ、っそ。もう、なんでそんなとこだけちゃんとしてるのよ」
「幸せな花嫁だから」
そう言って私は笑った。
目の前の親友は、呆れ半分嬉しさ半分といった顔で私を見つめている。
バチェラーパーティーに参加しに行った未来の旦那様を見送った後、私もホテルを抜け出した。
二週間前に開催されたはずのブライダルシャワーを、結婚前夜にも開催してくれる友人達に会うために。
仲の良い友達たちは、心から私を祝ってくれた。
「おめでとう」と「お幸せに」を沢山くれた。
十数人いた友人達は、半分が既婚者で半分が独身。
結婚の現実と夫婦生活のコツを面白おかしく話す時間は、少なからず緊張していた私をリラックスさせてくれた。
十二時を過ぎるとお開きになった独身最後の夜は、気心の知れた幼馴染みと二人で飲み直すことになった。
「それにしても、結婚式当日に籍を入れるなんて珍しいわよね。なんか、昔ながらって感じで」
「まぁね。うちの家、そういうのウルサイから」
「納得。暁(アキラ)のお父さん、厳しいもんね」
「箱入り娘なんで」
「結婚前夜まで馬鹿飲みする箱入り娘がどこにいるのよ」
「ここに」
ワイングラスを顔の横に持ち上げて、私は千那(チナ)を見た。
千那は苦笑いを浮かべてビールグラスを持ち上げた。
カチンと重なる二つのグラスを、とても幸せな音だ、と思って聞いていた。