それを愛と呼ぶのなら。【完】
私は、気付いてしまったんだ。
いや、本当はずっと前から気付いていたんだ。
でも、それを認めたくなくて。
認めてはいけないことだとわかっていたから、気付かないフリを決め込んでいた。
それもどうやら限界みたいだ。
もう、気付かないフリなんて出来なくなっていた。
悟がくれる言葉に。
悟がくれる表情に。
悟がくれる優しさに。
私はとっくに。
悟に恋をしていたのだ。
涼ちゃんが好きなことに変わりはないのに。
傍にいる悟のことを、今は涼ちゃんよりも身近に感じる。
気付けば、逢いたいと想っていた。
傍にいたいと、想っていた。
悟の『好き』は、恋愛の『好き』じゃないことは、私が一番わかっていた。
まして、涼ちゃんという『彼氏』がいるということで、私は悟の恋愛対象ではない。
だから、こんなに一緒にいられるということも知っている。
お互いを尊重できて、大切に出来る。
本当に大切な『友達』でいられる。
いつも一緒にいても、それは友達だから許されて。
抱き締められても、それは友達だから出来ることで。
私の放つ『好き』は、『友情の好き』だから笑って受け取ってもらえるのだと知っている。
だから、悟に『好きだ』と言える。
冗談交じりで伝える『好き』の中に、本物の『好き』を上手隠して伝えていたとしても。
気付かれない限りは、私の小さな『好き』を届けることが出来るから。
でも、これはイケナイコトだ。
涼ちゃんを裏切ることだ。
涼ちゃんを裏切る。
それが出来ないなら。
この気持ちは、しっかりと蓋をして、二度と開けてはいけない。
気付かなければ、よかった。
見てみぬフリを、すればよかった。
そうすれば、今まで通りでいられたのに。
気付いてしまった今となっては。
もう、遅すぎるということもわかっていた。