それを愛と呼ぶのなら。【完】
変わるもの。
変わらないもの。
沢山あるはず。
不変なことは、人を退化させることもある。
けれど。
不変であることが、人を成長させることもある。
変化は時に、人を不安にさせる。
けれど。
変化することで見えてくる未来もある。
それで、いいんだと想う。
変わらないことは、悲しいことではないと想う。
変わることは、嬉しいだけではないと想う。
「暁。約束しろ」
「何を?」
冷静を装った私の声は、簡単に震えてしまう。
だから、しっかりと力を込める。
どうか、今だけでも。
真っ直ぐ悟に届くように、と。
「幸せに、なれよ」
なるよ。
絶対に。
だって、今だって。
涙が出るくらい、幸せだもの。
悟の言葉に、不思議と涙は出なかった。
背中を押してくれる温かい声に、私は笑った。
これ以上ないと想う。
今出来る、最高の笑顔で。
「いい顔だ」
そう言って、悟は目の前の飲み物を飲み干した。
私も一緒に飲み干して、二人で沢山のお酒を煽った。
くだらない話をして、今の悟の仕事の愚痴を聞く。
私の職場の愚痴を吐く。
千那の恋愛はどうなってるのか、という話をすれば。
悟はモテるのに、ただのタラシだからいけない、という話になる。
私は彼氏持ちのくせに、無防備すぎると言われれば。
何のことかわからなくて、悟に頭を思い切り叩かれてしまった。
イイ音がした私の頭を悟は気に入ったらしく、その後何度か叩かれた。
時間は三時を過ぎて、もうすぐ四時になる。
私も悟も疲れ果てて、いつのまにか二人掛けのソファーで肩を寄せ合って眠っていた。