それを愛と呼ぶのなら。【完】
A wish of the final.
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「では、お時間までこちらのお部屋を自由にお使いになってください」
「わかりました。ありがとうございました」
「とても、お綺麗ですよ。もうすぐ、新郎様もお見えになると思いますので」
「はい」
新婦控室で身支度を整えた私は、一人鏡の前で座っていた。
鏡の中の私は、自分ではないような気がして、なんだか落ち着かなかった。
純白のドレスを身に纏い、あとはヴェールを身に着けるだけ。
去年まで短かったはずの髪は、綺麗に結うことが出来るまでに伸びていた。
またしても飲みすぎた私はと言えば。
エステの人に、散々怒られた。
そもそも当日のエステ希望さえ本来は受けないというのに、前日に朝帰りをするまで飲む新婦は初めてだ、と散々言われて。
でも、むくみも肌荒れもほとんどなかった。
それだけは上出来だ、と言ってくれた。
コンコン。
ドアがノックされる。
その音に目を閉じて、小さく返事をする。
きっと。
そこに立っているのは、私が大切にすると決めた人。
「はい」
ドアに向かって、緊張した声を伸ばす。
思ったよりも声が出なくて驚いた。
想像以上に緊張している自分がいる。
情けないけれど。
華奢な身体にタキシードを身に着けて、ほんの少しのシークレットブーツを履いているはず。
嫌がっていたけれど、見た目のバランスは大事!と、ウェディングプランナーさんに押し切られていた。
色んな色を試着して、結局純白、とまではいかないまでも、比較的真っ白なものを選んだ。
きっと良く似合っているであろう姿を想い浮かべ、開く扉を見つめていた。