それを愛と呼ぶのなら。【完】
「暁ちゃん、おめでとう!明日、楽しみにしてるからね!」
「俺らも式に参加するの楽しみにしてんだよ」
「涼一(リョウイチ)は?今日は来ないの?」
「涼ちゃんは男友達と飲みに行ってます。今日は別々に帰るから、来るかどうかはわかんないです」
店員のみんなとそんな話をしている間に、カズさんは人数分のグラスを用意してくれていた。
一人ひとりに手渡されるそのグラスには、綺麗な赤い液体が揺れていた。
「では、暁と涼一の幸せを祈って。カンパーイッ!」
「おめでとう!!!!」
「ありがとう。本当に嬉しい」
みんなから祝福の言葉と拍手をもらって、千那と私は目を合わせて笑った。
喉に滑り落ちるワインは多分カズさんのセレクトで、飲みやすい口当たりの軽めのワインだった。
「暁、今日飲みすぎたら大変なことになるから、ほどほどに帰れよ?」
「わかってますよ。みんなそればっかりなんだから。ちゃんと考えてます、ってば」
「カズさん、もっと言ってやって!暁ってばいつも通りに過ごし過ぎなんですから」
「ハハハ!まぁ、暁らしくていいけどな」
そう言いながら、何組か入ってきたお客さんの対応で店員のみんなはカウンターへ戻っていった。
店内は常連客が次々と入ってきて、みんな口々に『おめでとう』をくれた。
大体の人は明日の式に参加してもらうことになっている。
だから、明日も同じような光景になることは目に見えていた。
「愛されてるねぇ、暁」
嬉しそうに顔をほころばせて千那は私に言った。
赤ワインを流し込む千那。
なんだかとても色っぽかった。
「そりゃ、この店は特別だから」
そう言って、自分のワイングラスを空にした。