それを愛と呼ぶのなら。【完】
「ねぇ、久しぶりに聴かせてよ。暁の話。最近は式の準備で忙しくて、ゆっくり聴く事なかったじゃない?想い出話は、今日限りだしね?」
そうだね、と小さく応えてワインを飲み込む。
千那は知っている
話をすることで、私が色んな物に区切りをつけていけることを。
今までもそうやって、色々な物を飲み込んできたことを。
真っ直ぐ千那を見つめて笑う。
私の笑った顔を見て、千那が一瞬目を見開く。
そして、同じように笑ってくれて。
その千那の顔があまりに優しくて、少し泣きそうな気持になった。
「イイ顔してるよ、暁」
そう言って、少し安心したような声が千那から聞こえた。
お店の中は沢山の人の声が飛び交うように騒がしかった。
そんな中で私の気持ちは、少しずつ想い出の中に沈んでいった。
最後の夜。
あの四ヶ月の特別な日々を想い出す。
ほんのわずかな、でも大切な時間のことを。