無機質な恋模様
「最終的にこんな風な仕上がりにしたいの。まずはこのサイズから、いつものように文字を記入してくれる?」
『んー、わかったぁ』
「ただ、色で迷ってるんだよね…」


ファイルを机の端に置き、代わりに今度はその横にあったケースを引き寄せ、中に収納されている物をガチャガチャとあさりながら言葉を繋ぐ。


「前回は白だったんだけど、ファイルがクリーム色だから、ホラ、何だか境目がはっきりしてなくて見栄えがイマイチでしょ?汚れも目立つし」
『…だったらぼく、青がいいな』


するとてっちゃんはポツリと呟いた。


『その色かっこ良くて好きだから』
「あ、ホント?それじゃあ青にしようか」
『わーい』


お気に入りの色を渡されて、てっちゃんはとてもご機嫌な様子で、私が作業の事前処理を終えるのを待っている。


「これを連続で出るようにしてっと…。よし、できたぞ」


準備が整った所で、私は改めててっちゃんにお願いをした。


「はい。じゃ、あとはよろしくね」
『うん』


その言葉を合図に、てっちゃんは私の指定通りに文字のカキカキ作業を開始する。

しかし、完成した物を一つ拾い上げ、できばえを確認した瞬間、その事実に気付き、私はハッとした。


「あ、しまった!」
『え?』
「ごめんてっちゃん。ちょっとストップ」


慌てて彼の作業を中断させる。
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