無機質な恋模様
「太字のゴシックにしようと思ってたのに、書式を変えるの忘れてた。ゴメン。やり直しね」
『えぇー』


途端にてっちゃんはむくれた。


『んもー、最初にちゃんとゆってよー。3コも無駄に作っちゃったよー?』
「ごめんごめん」


苦笑しながら間違いを正し、再度処理をお願いした。


てっちゃんを「これ」しかできない子だと言う人もいるけれど、それはちょっと違っていて、「これ」を成り立たせる為に、彼らがこの世に誕生させられたのだ。


ただ一つの目的の為だけに存在する、その特殊な素材に加工を施せる、専門の技術を備えているてっちゃん達が。

だからこそ彼は自分の仕事に誇りとプライドを持っていて、私達サイドがきちんとミッションをこなさないと、たちまちご機嫌斜めになってしまうのだった。


『あ』


てっちゃんが仕事している間、私は私のやるべき事を進めていると、ふいに彼は動きを止め、私に訴えかけて来た。


『青いのなくなっちゃったよ』
「あ、うん。そろそろかなーと思ってた」


もうかなり残り少なくなっていたから。

しかし、そういった物から順番に使っていかなくてはいけないので、それに関してはてっちゃんは文句を言わなかった。


『はやくはやく~』


その代わり、無邪気に急かしてくるけどね。


「はいはい、ちょっと待っててね」
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