無機質な恋模様
言いながら入室し、ドアを閉めて、私の側へと近付いて来る。


「いえ、まだです。キリがいいところまで終わらせてからにしようかな、と思って」
「そっか。あ、なに?一番新入りの子使ってるんだ?」


机上のてっちゃんに気付いた靖子さんは、とても意外そうに問い掛けて来た。


「はい」
「私、この子はちょっと苦手なんだよね。何だか使い勝手が悪くない?」
「え…。そうですか?」
「うん。私はあの、一番古株の子がお気に入りだな」


実はてっちゃんにはお仲間がたくさんいるのだった。

とにかく我が機関では様々な様式の書類を取り扱っていて、それぞれの担当者がファイリング作業を行うタイミングが被りまくるから、てっちゃんと同じ働きをしてくれる子を複数待機させておかないととてもじゃないけど処理が間に合わない。

そして業務上、うちの課が一番保管書類を多く抱える事になり、てっちゃんを入れて三体のメンバーをキープしている。


彼らが必要になった際は、そのうちのどれかを選んで作業する場所に連れて行くという訳だ。

もちろん、ラスト一体だった場合にはその子にお願いするけれど。

しかし三体確保していてもなお、年度末、数十人もの臨時のバイトさんを雇っての大がかりな資料整理時には数が足りなくなって、他の課に応援を頼む羽目になるのだった。
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