無機質な恋模様
しかし私はちょっぴりやさぐれ気分で言葉を発する。


『私なんて『え?この子ここにいたんだ…』『そもそもどういったスキルがあるんだっけ?』なんて言われる始末。人気者のたっちゃんにはこの気持ちは分からないだろうけど』
『いや…そんな。僕なんてまだまだ。事務処理の人気者で花形といったら、やっぱりエル君だよ』


ちょっぴり困ったような表情で彼が口にしたその名前に、私はピクッとなった。


『僕は文系だからひたすら文書を作成するだけだけど、エル君はとても優秀で色んな事ができるもんね』


感嘆のため息を漏らしながらたっちゃんは続ける。


『最も得意なのは計算だけどさ。でも、その気になれば、僕の仕事なんてあっけなく肩代わりできちゃうから』

『…いや、たっちゃんだってすごいじゃない』


トゲトゲオーラを出しまくっていたであろう自分に気が付き、大いに反省をしつつ、私は彼をフォローした。


『私とこうして会話を交わしながらも、オーナーの指示通りにお仕事をせっせとこなしているしさ』


たっちゃんは真面目で勤勉でとっても素直だもんね。


気に入られるのにはやはり、それだけの理由があるということだ。


『ごめんね?八つ当たりしちゃって。私とのおしゃべりはいいから、そっちに意識を集中して』
『あ、うん。じゃあ、そうさせてもらうね』
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