無機質な恋模様
断りを入れた後、たっちゃんは私に背を向け、本格的に業務に没頭し出した。


『タローが相手だと、ホントよくしゃべるよね』


……来やがったな。


頭上から降り注ぐ声に、私はとっさに身構える。


こうやって隙を見ては、ちょいちょい私に絡んでくるんだよね、コイツ。


その正体は、先ほどの会話に出てきた『エル』。


初対面で私を『古い女』扱いした男だ。


再びイライラムカムカが渦巻き始めた私の心中など知る由もなく、エルは快活な口調で話を続けた。


『ハナコは何故だかボクの前ではいつも淡白でそっけなくて言葉数が少ないから…』『ちょっと!』


そこで私は彼にキッと鋭い視線を向けつつ抗議する。


『本名で呼ばないでって、言ってあるでしょ!』


何回言えば分かるのよ!


『ハハ。例外もあった。この話題に関してはとてもエキサイトするんだよね』


その口調には『してやったり』感がこれでもかとばかりに溢れ出していた。


コノヤロー、狙ってやってるな!?


『んもー、ホントにその名前イヤ!私、いってもそれほど大昔に誕生した訳じゃないのよ?何でそんなレトロなものを当てはめるかなぁ?』
『しかしどうしてそんなに怒るのかが分からない』


そこでエルは言葉通りの不思議顔で首を傾げた。
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