無機質な恋模様
『大和撫子に相応しい、古式ゆかしきキュートな名前じゃないか』


そして頭の位置を戻しつつ、ニッコリと微笑む。


青く碧い目を細め、クセのない、前髪長めの金髪をサラリ、と揺らしながら。


……私がうぶな小娘だったなら『絵本の中の王子様みたいっ』なんつって、浮かれはしゃぎまくったかもしれないけれど、あいにくそんな恋に恋する乙女心は持ち合わせちゃいない。


『忘れた』のではなく『最初からない』のだ。


自分の存在を認識した瞬間からすでにこの思考回路だったから。


『と、とにかく、私自身はその名前は心底気に入らないの!今度そう呼び掛けられても、返事なんかしないからね!』


睨み付けたままそう通告すると、エルはやれやれ、という感じの表情を浮かべながら、肘を曲げて両手の平を上にして持ち上げ、肩をすくめる。


そのベタベタな欧米型リアクションに更にイラついている間に、奴はふと、前方に視線を向けた。


『おっと。どうやらボクにもミッションが下ったようだ』


……はいはい。

あんたは一日のうちに何度もお呼びがかかるものねー。

私なんかとは大違いですよねー。

何てったって卓越した技術をお持ちだものねー。


『じゃあ、また後でね、ハナコ』
『ちょっ!』
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