無機質な恋模様
十数秒前の会話をもう忘れたんかい!と突っ込む隙も与えずにエルはさっさと私に背を向け、オーナーの指示に耳を傾け始めた。


……まぁ、奴がこなさなければならない仕事量は半端ないから、私に構ってる余裕なんかないだろうけど。


『はぁ~、今日も長い一日になりそうだな…』


再びため息を吐き、エルとのやり取りで思わず立ち上がってしまっていた私はその場に座り直して膝を抱えた。


エルは半年前に、私達の仲間に加わった新参者だ。


しかし生まれながらの高スペックで、着任したその日から、新人とは思えないグッジョブぶりを発揮していた。


「いやー、やっぱ2013年組に変えて正解だわー」


自分が先代の後を引き継いだのを機に、前任者を引退させ、エルを導入した現オーナーが、ホクホク顔でそう語っていたっけ。


『だけど私だってそのチャンスさえ与えてもらえれば、色々とお役に立てるんですよ…』


なんて、思わず呟いてみたけれど。


オーナーの耳にも心にも届く筈などない。


何だかとってもむなしくなってしまって、私は現実逃避して自分の世界に入り込むべく、きつく目を閉じ、抱えた膝に顔を埋めた。
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