無機質な恋模様
『ああ。それで、マネージャーさんが呼ばれて強制終了させられた。だからこんなに暗いんだよ。他の皆にはそれと同時に眠ってもらっている』
『だ、大丈夫なの?』
『ああ。こまめに上書き保存していたから、大部分のデータは無事だよ。それ以降は消えてしまったかもしれないけれど…』
『そ、そうじゃなくて、あなた自身が』
『え?』


一瞬の間の後、エルは笑いを含んだ声音で問いかけて来た。


『……ボクの心配をしてくれているんだ?ハナコ』
『は!?ち、ちがうわよ!』


どさくさ紛れに先ほどからその名前を連呼している事はとりあえずスルーし、私は慌てて否定する。


『あんたにもしもの事があったら、こっちにまで被害が及ぶかもしれないから…』
『いや、それは大丈夫』


するとエルは突然、力強く宣言した。


『万が一の場合、ボクだけが消滅するようになっているから。仲間たちにはメイワクはかけないよ。特にハナコ、キミの事だけは絶対に傷付けない』


私は思わず言葉を失ってしまった。


『それに今回の場合は、ちょっと休めばすぐに回復できるから。ただ…。そうだな、いつ、何が起こるか分からない。だから、今のうちに大切なことをキミに伝えておこうと思う』

『……え?』

『初めて会った時、ボクは言葉のチョイスを間違えた。『古めかしい』ではなく、『古きよき時代を継承している』場所だと言うべきだった』
『な、何をいきなり…』
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