無機質な恋模様
「しっかし、兄貴も思い切ったもんだよなぁ」


居間のソファーに腹を突き出すようにして腰掛け、窓辺に立つ私の全身を上から下まで万遍なく眺めたあと、顔を正面に戻しつつ、その男性は続けた。


「義姉さんが亡くなってヒカルちゃんの世話をどうするのかと思ってたら、まさかこんなのに頼るなんてね」

「導入している家庭は年々増えているらしいぞ」


その向かいのソファーに座る男性、私の雇主である小堀氏が柔らかな口調で応答している。


目の前の二人は「兄弟」であるらしい。


細身で長身の兄と、背が低く、全体的に丸いフォルムの弟。


血の繋がりがあっても、必ずしも同じ形態になるというものではないらしい。


「時代も変わったよな。こんなの、SFの中だけのお話かと思ってたのに」

「技術は日々進歩してるんだ。そもそも、人工知能なんてのはもうとっくの昔に開発されていたものなんだから。後は外身の問題だっただけで。こういうものが一般家庭に出回るようになったとしても、大して驚くことじゃない」

「いや、でも、兄貴は高給取りだから良いけど、やっぱ普通のサラリーマンが気軽に手を出せるようなもんじゃないんだろ?」


小堀氏は私がいれた紅茶に口をつけていた。


それを飲み下すため、一瞬返答が遅れる。


「……まぁ、外車一台分くらいの値段かな」

「うげ。俺には絶対に無理だ」
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