無機質な恋模様
もちろん小堀氏の世話もするが、ヒカルほど多くの時間を共にする訳ではない。


彼は一人で風呂に入れるし一人で眠れるし一人で会社に行けるから。


なので必然的に、ヒカルに関するデータの方が数多く私の中に蓄積されていく。


ヒカルは「泣き虫」。

ヒカルは「甘えん坊」。

ヒカルは少し「わがまま」。


だけど、本当はとても「優しくて良い子」なのだ。


ある日曜日。


多忙な小堀氏は休日出勤だったので、私はヒカルにねだられ、デパートに遊びに連れて行く事になった。


ヒカルは各フロアを、キャッキャッとはしゃぎながら見てまわった。


特に玩具売り場のぬいぐるみコーナーでは、自分の身長と大して変わらないような大きさのくまのぬいぐるみに釘付けで、しばらくその場を離れたがらなかった。


おもちゃは誕生日とクリスマスにしか買ってもらえない決まりだったのでそれを手にする事はできなかったけれど、ただその空間内にいられるだけでヒカルはとても嬉しそうだった。


無駄遣いはいけないが、昼ご飯だけは贅沢をしても良いと小堀氏に言われていたので、最上階のレストランでお子様ランチといちごパフェを頼んであげた。


私は何も頼まない。


私は食事をする必要はないから。


ウエイトレスはとても怪訝そうな顔をしていたが、いちいち正体を明かす必要はないので黙っておいた。
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