無機質な恋模様
ヒカルにとってプラスになることであるのは間違いないのだから。


ヒカルが「嬉しい」と思うのならば、私はこれからも自分の職務を全うしよう。


「分かった」


そう答えると、ヒカルは私の背中に顔をこすりつけ「えへへ」と嬉しそうに笑った。



***********

「マモル!」


夕飯を作っていると、ヒカルが怒りに震えた表情でキッチンに現れた。


「私の部屋、掃除したでしょ!勝手に入らないでって、言ったでしょ!」


ヒカルは高校生になっていた。


これからは部屋の掃除は自分でするから、とこの前宣言されたのだが……。


「いや、でも、だいぶちらかっていたから」


あれを無視する訳にはいかない。


「休みの日にまとめてやるから良いの!今度勝手に入ったら許さないから!」


ヒカルはそのまま出て行こうとしてふと戸口で立ち止まり、振り返った。


「今度の日曜出かけるから。夕飯いらない」

「福田君と?」


私はここ数週間で一番良く耳にする名前を口にした。


「違うわよ。山本君と」

「新しいお友達?」

「お友達じゃなくて、彼氏」


「……彼氏は福田君では?」

「いつの話してんの。福田君とはとっくに別れたし」

「また?」


ヒカルの「彼氏」は頻繁に入れ替わる。


データを更新しておかなければ。


「何よそれ。嫌味?」

「嫌味?」


ヒカルの言葉に、私は首を傾げた。
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