ずっとお前を待ってるから
「…鈴太に何を言ったの?」

「んー…別に」

「てか、なんでついてくるのよ」

「家が隣だから?」

放課後、海は用事があるらしく私一人で帰ろうとした時後ろを普通に付いて歩く彼に今日の事を問いただしても聞き流しているようにサラリと話題を変えられる。

「それよりも、お前…何か女子にされなかったか?」

「…女子?」

「今日告ってきた女子がよ、俺が好きな人いるって断ったらやっぱり清安さんと付き合ってたのねっ…!とか言って
走って行ったから」

「…そう、なの」

ケラケラとした表情とは打って変わって少し真剣そうな顔に胸が高鳴った。すると、女子の話しになり朝の出来事が脳内で再生される。あれは、本当に怖かった。

「俺は、他の女子に告白されても靡かねえから」

頭に手を置かれるとそのまま低いテナー声が耳元で響き顔に熱が集まる。そのまま惚けていると一瞬、ほんの一瞬だけ頬に暖かく柔らかい何かが当たりバッと手で抑える。

「い、今何したのっ…!?」

「ん?キスしちゃ駄目だなんて誓い立てないだろ?」

「〜っ馬鹿!!」

「…お前の周りの友達が羨ましくてしょうがねえよ」

「何を言って…」

子供っぽい笑みから困ったように私を見つめる彼の瞳はやっぱり寂しそう。何故、彼がそんな事を言うのか理解が出来なかった。だって、そしたら私だって…。

「じゃ、また明日な」

「ちょ、ちょっと…っ!」

いつの間にか着いてしまった家に少し残念さを感じ慌てて頭を振る。彼は何事なかったかのような素振りで隣の家に入って行きヒラヒラと手を振った。

「なんか…ムカつく…」


腑に落ちないまま少し玄関の扉を強めに閉めた。
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