ずっとお前を待ってるから

｢その格好…もうちっと…こう…｣

｢何よ、緑下君｣

｢いや、何か…男子の視線を釘付けにするっつうか…｣

可愛い可愛いと連呼する冬二にその場に落ちていたガムテープなどを投げ付け不満を爆発する。私達はあれから月日が経っても変わらず付き合ってはおらず寧ろ私が冬二と距離を置いている最中。そんな中で…この学校祭は気まずい。

｢…?｣

｢あら、柚那の格好気にいらないの?｣

｢いやいや!可愛いっ!可愛いけどよ…っ!その…｣

ふと、悔しげに彼を見つめると視線を泳がせていた。その仕草に不思議そうに首を傾げると上から下まで頬を掻きながら見つめる視線はぎこちない。

｢文句があるならはっきり言いなさいよ、緑下君。まぁ、文句言ったところで私が許さないけど｣

｢い、いやその…!柚那の格好がなんつうか…危ないって言うか…目のやり場に困るっつうか…｣

｢…あ～あ…そういう事ね｣

｢…?どういうこと…?｣

｢柚那のこの肩が出ているのが許せないのと少し短いスカート姿を他の男子に見せたくない!寧ろ独り占めしたい!…って事よね?｣

｢な…っ!?｣

｢正解正解…｣

サラリと答える海に拍手をする冬二に私はその場から逃げたくなり近くに置いてあった布を肩に掛け蹲(うずくま)る。

｢もう私劇なんて出ないからっ…!｣

｢そんな事言わないでよ、柚那〜。折角私が徹夜で作ったワンピースなんだから～｣

｢う…そ、それでも嫌っ…!｣

海の言動に罪悪感を感じるも半分涙目の私を助けてくれるのは誰もいなかった。
皆の目は焼肉無料券しか見えておらずどうにもこうにもならなかった。

｢…似合ってるよ、柚那ちゃん｣

｢え…あ…鈴子(れいこ)ちゃん…｣

背中を撫でられ顔を上げると微笑みながら頭を撫でてくれるのは鬼柳鈴子(きりゅうれいこ)。
鈴太の双子の妹で体が弱い為ずっと入退院を繰り返しこの月になってからやっと学校に来れたのだ。