ずっとお前を待ってるから
劇の練習は…困難を極めた。

「絶対に嫌っ…!!」

「俺に委ねろって…」

例え劇の練習だろうと女子の悲鳴に近い声が飛び交う。
それと同時に目の前の近付いてくる男の顔を全力で抑え阻止する。

「緑下ぁ〜、演技なんだから振りだけでいいんだって言っただろうがーっ!」

「えー、それじゃあつまんねえだろ」

ベッドに催(もよお)した白い布の掛かった机の上で私はひたすらこの男を阻止しつづけていたら周りの男子からは呆れたような声が掛かる。

「清安の事好きなのはわかるが少しは真面目にやってくれよ〜!」

「ちょ、っと…!」

「柚那も俺の事好きだから相思相愛だっての〜」

「違うからっ…!!」

ひっ。太陽のみたいに笑う顔は昔と変わらず子供っぽいと考えているとステージの下の女子の視線が視界に入り背中に悪感が走る。鋭く睨む女子の視線は明らかに私に向けられており冬二が転校して来た日以来、敵視されている。

「じゃあ、十分休憩なー」

「はーい」

一人の男子が休憩と言った途端にドッと疲れが襲ってくる。ベッドから降りステージの裏手にまわり一休みをする。

「…ふう」

「お疲れ様、柚那ちゃん」

「あ、鈴子ちゃん…お疲れ様」

ため息を吐きその場にあった椅子に座るとクスッと目の前の幕の所から聞こえ肩を跳ねらせると綺麗な笑みを浮かべた鈴子ちゃんがペットボトルを片手に小さく手を振っていた。

「隣いい…?」

「え、あ…うん、いいよ」

少し椅子をずらしすぐ側にもう一個置いてあった椅子を引き寄せ隣を促す。小さく会釈し静かに隣に座った鈴子ちゃんは本当に女の私でも美しいと感じる程。

「柚那ちゃんは、本当に可愛いね」

「そ、そそんな…鈴子ちゃんの事の方が可愛いし綺麗で…女の私で見とれちゃうくらいだよ?」
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